観光庁、情報・成果共有に向けて全国5都市でセミナー
観光庁は、中小規模の旅館・ホテルの経営者や幹部を主な対象として「宿泊業の生産性向上に関するセミナー」を3月に全国5都市で開催した。先進的な旅館の経営者や女将が自らの体験を通じて生産性向上のモデル事例を発表。付加価値の向上をテーマにしたワークショップも実施され、参加者による討論や発表が行われた。3月5日に東京都内で開かれたセミナーの主な内容を紹介しよう。
旅館の事例発表とワークショップ
東京開催のセミナーには約50人が参加した。冒頭、観光庁観光産業課観光人材政策室の川村康二室長は「日本のサービス業の生産性は、国際的に比較すると低い水準にある。機械化、IT化、AI化などの合理化も進まず、労働時間も長い。成功事例などの情報共有、水平展開により、みんなで生産性を向上させていきたい」と語った。
モデル事例は経営者ら2人が発表。箱根エリアに旅館、ホテルを展開する一の湯グループ、一の湯本館(神奈川・塔ノ沢温泉)社長の小川晴也氏は、人時生産性に着目した取り組みを紹介。天城荘(静岡・大滝温泉)女将の田中智与氏は、人材をフル活用した経営再建の体験を語った。
ワークショップは、宿泊施設活性化機構事務局長の伊藤泰斗氏が講師を務めた。伊藤氏は「労働生産性の改善には、粗利益の改善か、総労働時間の短縮しかない」と前置きした上で、粗利益の改善のうち売上高増大について「日本は『いいものを安く』でやってきたので、給与が上がらず、消費も増えてない。特にマーケティングやブランディングが弱い。儲かっている外資系などはいかに高く売るかを考える」として、付加価値の向上に成功している各地の旅館の事例などを紹介した。
伊藤氏の講義を踏まえて参加者は、配布されたシートに粗利益高の向上や総労働時間の低減への自館の対応策などを記入。シートをもとにした討論、発表で理解を深めた。
セミナーは、札幌、名古屋、大阪、福岡でも開催。モデル事例を発表した他の旅館経営者らは次の通り。
金谷ホテル(栃木・鬼怒川温泉)社長・金谷譲児氏▽元湯陣屋(神奈川・鶴巻温泉)女将・宮崎知子氏▽HATAGO井仙(新潟・湯沢温泉)社長・井口智裕氏▽ゆのごう美春閣(岡山・湯郷温泉)社長・永山久徳氏